おかげ様で今月の25日に五周年を迎えます。
思い起こせば地元であるこちらで開業するに至った一番の理由は
上京の15年余りの和食修行の際に、茨城の野菜の素晴らしさを
思い知ったからでした。
私が生まれ育った土地には誇るべき食材があるという事に気付き
自分のやってきた料理を通して、消費者と生産者をシンプルに繋げられる
気取らない和食店が持てたらと考えました。
そして故郷の下妻市からほど近いこのつくばでテナントを探し
庭の菩提樹とヘンテコな造りの古民家が気に入り、お借りしました。
元ハンバーガー店からの大幅な改装と立ち上げまでを出来る限り自分と
仲間の手で行い、やっとの事オープンにこぎ着けました。
その二週間後にあの震災に見舞われました。
出来たての店が大きくスローモーに揺れている姿は
脳裏に鮮明に焼き付いています。それから一年は店に住込み
ただ闇雲に毎日を繰り返すだけ途方に暮れてもいられず、
悲しみを胸底に閉じ込めて「自分の店」という実感が掴めないまま
気付いたら五年が過ぎようとしています。
それでも、街の端っこでろくに看板も掲げずも続けてこれたのは
お客様のごちそうさまの声だったり、食べ残しのないお皿だったり
頼もしく育っていくスタッフ達だったり、
ご飯を食べに来てくれる両親の姿だったり
四季折々に表情を変える庭の菩提樹だったり。
闇雲だけれども繰り返え繰り返した、五年間を振り返る事で
今やっと「自分の店」が始められるような気がします。
「たとえば漁師町のお寿司屋さんのように
毎朝、この土地で採れた野菜をダンボールいっぱいに仕入れて
シンプルにに調理して、別け隔てなくこの土地で提供する。
その代価をいただきこの土地で暮らす。そんな小さな小さな循環を生む事。
五百円の丼ぶりも一万円のコース料理も同様に
ニーズとその条件の中で献立を考え、自分らしいやり方で自由にやる。
地野菜ふんだんに使ったお客様と自分がワクワク出来るようなお店を目指そう」
支えて下さった皆々様に感謝を込めて
ピースサインを贈ります。
友達とスタッフの力を借りて、五周年にちなんだ企画をご用意しました。
いちげんさんも常連さんも
どうぞどうぞいらっしゃいませ。