六月

0
    からっ梅雨。
    朝までラジオを聞く。

    お偉いさんは今日もズルいやり方で
    重大な決め事を押し通す。
    僕たち庶民はなすすべもなく
    真綿で首を絞められていくのか。
    DSC05644.JPG

    六月  茨木のり子

    どこかに美しい村はないか
    一日の仕事の終りには一杯の黒麦酒
    鍬を立てかけ 籠を置き
    男も女も大きなジョッキをかたむける

    どこかに美しい街はないか
    食べられる実をつけた街路樹が
    どこまでも続き すみれいろした夕暮は
    若者のやさしいさざめきで満ち満ちる

    どこかに美しい人と人との力はないか
    同じ時代をともに生きる
    したしさとおかしさとそうして怒りが
    高い鼻に胸でも病んでいるらしい
    鋭い力となって たちあらわれる

    静物

    0


      静物 吉岡実

      夜の器の硬い面の内で
      あざやかさを増してくる
      秋のくだもの
      りんごや梨やぶだうの類
      それぞれは
      かさなったままの姿勢で
      眠りへ
      ひとつの諧調へ
      大いなる音楽へと沿うてゆく
      めいめいの最も深いところへ至り
      核はおもむろによこたはる
      そのまはりを
      めぐる豊かな腐爛の時間
      いま死者の歯のまへで
      石のやうに発しない
      それらのくだものの類は
      いよいよ重みを加へる
      深い器のなかで
      この夜の仮象の裡で
      ときに
      大きくかたむく

      いびつ

      0

        三種のアスパラ 空豆 スナップ豌豆


        この時期の独活の葉は天ぷらで最高です。
        芹菜は出汁巻きとお浸しに。
        わさび菜はそのままサラダに。


        いびつな野菜をずっと見ていると
        違った物に見えてきて、愛着が出て
        調理するのがもったいない程です。


        「There was a Crooked Man」  マザーグース

        いびつな男がおりました
        いびつな小道をあるいたら
        いびつな木戸のその裏で
        いびつな小銭を拾ったと

        いびつなネズミをつかまえた
        いびつな猫を買って帰り
        いびつな小さい彼の家
        いびつに仲良く暮らしたと

        花の花

        0
          当店の庭の花々は満開





          「詩人から頭の固いひとに」 
          ラングストン・ヒューズ/木島始 訳
           
          ぼくは さっぱり何もしてあげなかったね
          きみの ために、
          きみも さっぱり何もしてくれなかったね
          ぼくの ために、
          だから ぼくたち 意見一致しないのには
          充分に 理由がある。
           
          しかし ぼくは
          瞬間に しがみつき、
          いとも かすかな力しかもたぬが、
          きみは 支配しているのだ
          時間を。
           
          しかし きみの
          時間は 石だ。
           
          ぼくの 瞬間は
          花だ。



          拍手

          0
            DSC02743.JPG
            DSC02742.JPG
            卯月一日
            裏庭の椿は落ちて

            DSC02741.JPG
            入口のサクランボは芽吹き

            DSC02758.JPG
            店内の桜は満開

            アプローズ    覚 和歌子

                毎日の 晩ご飯のごちそうに 拍手
                食うや くわずの暮らしは
                ご飯とお新香だけでもおいしくて 拍手
             
                道端の犬のうんこに
                「よくまぁ こんなに出たもんだ」と  拍手

                それをデートの時
                しかも 新しい革靴で踏んづけて
                滅多にできない経験だから 拍手

                生まれてくる赤ん坊に 拍手
                生まれてすぐ死んだ弟に
                わざわざ 苦労しなくってすんでよかったと 拍手

                百歳で死んだおじいちゃんには
                こんな世の中に100年もよく生きたと 拍手

                大天才の芸術作品に オー ブラボー と 拍手
                迷いのつきない芸術家には 長い旅の楽しみに 拍手

                ピチピチと健康な体に 拍手
                抱え込んだ病気には
                乗り越えられる力を 試されていて 拍手

                不治の病には
                たった今生きているという そのことの眩しさに 拍手

                善人は そのまんまで救われて 拍手
                悪人は その罪深さのせいで
                尚のこと救われる余地があって 拍手

                垣根に咲いた
                赤い寒椿の その赤さに  拍手

                枯れ落ちた 赤い寒椿から
                地面にその種がこぼれて 拍手

            世界はうつくしいと

            0
              「世界はうつくしいと」

              うつくしいものの話しをしよう。

              いつからだろう。ふと気がつくと、

              うつくしいということばを、ためらわず

              口にすることを、誰もしなくなった。

              そしてわたしたちはの会話は貧しくなった。

              うつくしいものをうつくしいと言おう。

              風の匂いはうつくしいと。

              渓谷の石を伝わってゆく流れはうつくしいと。

              午後の草に落ちている雲の影はうつくしいと。

              遠くの低い山並みの静けさはうつくしいと。

              きらめく川辺の光はうつくしいと。

              おおきな樹のある街の通りはうつくしいと。

              行き交いの、なにげない挨拶はうつくしいと。

              花々があって、奥行きのある路地はうつくしいと。

              雨の日の、家々の屋根の色はうつくしいと。

              太い枝を空いっぱいにひろげる

              晩秋の古寺の、大銀杏はうつくしいと。

              冬がくるまえの、曇りの日の、

              南天の、小さな朱い実はうつくしいと。

              コムラサキの、実のむらさきはうつくしいと。

              過ぎてゆく季節はうつくしいと。

              さらりと老いてゆく人の姿はうつくしいと。

              一体、ニュースとよばれる日々の破片が、

              わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。

              あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。

              うつくしいものをうつくしいと言おう。

              幼い猫とあそぶ一刻はうつくしいと。

              シュロの枝を燃やして、灰にして、撒く。

              何一つ永遠なんてなく、いつか

              すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと。


              | 1/1PAGES |

              calendar

              S M T W T F S
                   12
              3456789
              10111213141516
              17181920212223
              24252627282930
              << September 2017 >>

              selected entries

              categories

              archives

              recommend

              profile

              search this site.

              others

              mobile

              qrcode

              powered

              無料ブログ作成サービス JUGEM